ソウル3日目「歴史認識」

なぜかの10時から顔合わせ。には、まぁ5分遅刻。

お昼ご飯をみんなで食べて、全編読み合わせ。
2時間15分。
長いのはわかっていたので、これ位で済んで良かった。
でもまともに上演したら2時間半は超えるので、短くしなくてはいけないですね。

その後、俳優達と脚本についてのディスカッション。
今回は、扱う題材が題材だけに、歴史認識の話にならざるを得ない。
作家のギウンさんが今はドイツに行っていて居ないので、答えのない問い合戦。

今回は、本当にコアな歴史認識に触れる作品ではあるので、こういう作品を、在日韓国人でもなく、純粋な日本人が演出して韓国で上演する、ということは、ほとんどやられていない事なので、というか、そういうことはしてはいけない事だったので、様々な意見が出てしかるべき。

チェーホフの「かもめ」の設定を1930年代の日本の植民地だった朝鮮に置き換えたものですが、今日俳優から聞いたことで一番わかりやすかったのは、今まで見た1930年代を舞台にした映画や演劇の中で、今作が一番韓国人と日本人の仲がいい、というもの。
普通に「かもめ」のダイアローグを置き換えるとそう見えるようです。
まぁそれは、演出で見せていくという話を作家ともしているという前提もありますが。

日本に対して反抗的な発言をする人物が居ないのはかなり違和感があるそうです。
それに対して、いや、日本と仲良かった人たちもいるんじゃない?とか想像する日本人がいたとしたら、まぁかなりヤバい。韓国人が想像する分には大丈夫ですが、日本人はそれやっちゃダメ。

ちなみに、日本人の俳優から出た意見は、悲しい話だね、とか、みんなよかれと思って行動したのに不幸にしかならないね、というまっとうな「かもめ」の感想でした。

韓国人俳優からは、この戯曲が韓国の歴史認識上どれくらい違和感があるのか、なぜあるのか、どこにあるのか、という意見がかなり出ました。まぁほぼその話に尽きる。

問題は色々ありますが、日本人が全くその事について想像すら出来ないこと、感想すら抱けない事にもあるんだけども、それは韓国上演にはあまり関係が無いので、いつの日かの日本上演の際に、その辺は信じられないくらい表出させようとは思います。

今の日本人の現状を伝えたら、流石にヤバい。誰も何も知らないから。
色々意見はありますが、日本が韓国を植民地にしていた事も知らない人も居れば、欧米諸国の植民地政策に比べて日本の植民地政策は素晴らしかったという人もいるし、まぁそれは、日本国内で言ってくれてれば良いだけの話で、外国で活動する身にとっては迷惑千万でしかないんですが。
直接韓国で韓国人と顔合わせて作品作るのが日常な身としては、日本にいるだけの人の歴史認識って、けっこう、チャンチャラおかしい。
認識だけ勝手にしてろ。
現在の関係を築こうとしていない話は全く意味ない、価値もない。

私たちに必要なのは、まず、目の前の相手が何を考えているかを知る事。
韓国の日本に対するイメージを想像するのには、日本のアメリカに対するイメージが日本人にとっては一番わかりやすいという話をしたら、日本はアメリカの植民地じゃなかった、韓国は日本の植民地だったから、それは比にならない。
とも言われました。今まで仲良くしていた友達にですよ。

あとなかなかセンシティブなのは、演出家が日本人だという事。
たとえば日本国憲法が素晴らしいという作品を、日本人演出家が作るのと、アメリカ人演出家が作るのでは、全く同じ戯曲、演出でも、まぁ違うわけですね。
そういうことですね。

まぁでも、かたや、日本人が、例えば原爆投下は本当に素晴らしいという作品に、どれだけの人が嫌悪感を抱けるかと言うと、かなり怪しいとも思う。
少なくとも関東の人間は、原爆が自分たちの問題という感覚はかなり薄いとは思う。昔の日本であり、今の自分ではないだろう。
広島と長崎という自分と関係ない土地で昔起きた事、にすぎないんじゃないだろうか。
これは不愉快に思う人も居るだろうけども、全てがそうではないとは思うけども、否定は出来ない事だとは思う。

でも実際、広島、長崎、福島に当事者意識が持てないんだったら、まぁもう何があっても無理だろう。まぁ実際そうだし。自分の事にしか興味がないわけですから。外国人から、面と向かって、日本てさー、って言われるその日まで。

結局人間は自分の事にしか興味ないでしょ。ってよく聞きますが、そんな事ないですよ。
本来人間は自分の事以外にも興味が持てます。今の日本は興味をもたないようになったんです、人間本来とかじゃない。
そんな自己肯定あるか。バカか。だったら速攻滅びてるわ人類。そんなこと言ってる奴ら勝手に滅びろ。

ただ残念ながら国難に対して当事者意識を持つという精神は今の日本には皆無なわけで、日本の植民地化への当事者意識を国策を挙げてき続けた韓国で、その問題を取り上げるわけですから、日本人としてはかなりコンフューズポイントがあるわけです。

ホントに、今の日本人と韓国人は、歴史認識の話さえしなければ、かなり幸せな関係が築けるんだけどな。この問題は、本当に迷惑、互いに必要を感じていないのに。
歴史教育って、一体何の為にしてるんだろうか?
今の所、歴史は障害でしかない。
この歴史は恐らく何も生まないだろう。
これまでも、恐らく何も生んでこなかったのではないだろうか。

明日は青年団のソウル市民のDVDをみんなで観る予定。
韓国人が観た時の違和感の話をする予定。